今年に入ってから一番楽しみだったと言っても過言ではない、
「THE BATMAN」を観てきました。
予告編すらシャットアウトするという気合の入れようです。
バットマンシリーズは大体観てきましたが、今回はバットマンを演じる俳優の中で最年少となる
ロバート・パティンソンが演じるということで一際話題性の高いものでしたね。
優男なイケメンのイメージを持っていたのでどんな感じになるのかと
少し心配ではありましたが、そんなことは杞憂でした。
◆“バットマンらしいバットマン”
今までのバットマンはなんというか、スマートな感じが強かったんです。
いや、それはそれでかっこいいんですよ。
さまざまなガジェットを駆使して割と淡々と悪を退治していくヒロイックなバットマン。
それらに比べて今作のバットマンはまだ2年目という設定なので色々と荒削りなんです。
バットカウルは継ぎ目が目立つものですし、象徴的なガジェットも
バットラング(主にナイフ的な使い方でしたが)やグラップルガンくらいしか出てきません。
戦闘もかなり泥臭いというか、結構ボコボコ殴られてたりとかします。
ただ、そのバットマンの魅せ方がめちゃくちゃカッコいいんですよね。
黒く塗りつぶしたような闇からぬっと姿を現すシーンは恐ろしくもカッコよくて本当に最高。
夜空にバットシグナルが灯り、それを見た悪党達が何もいるはずのない闇に怯える。
「悪に恐れられるバットマン」がしっかりと表現されているなと感じました。
好感が持てたのが“世界一の探偵”というバットマンの側面をちゃんと描いてくれていたところ。
リドラーとの対峙までしっかり捜査してじわじわ近づいていく感じが面白い。
手助けをしてくれるアルフレッドも本当に良い。
完成前をチラチラ見せつつ満を持して登場するバットモービルはマッスルカー然とした
これまた荒削りな佇まいでめっちゃくちゃカッコイイ。
見せ場はあまりないのが残念でしたが。
恐怖を武器にしながらも己の恐怖を克服できていない、苦悩を抱えた不安定で恐ろしいバットマン。
個人的にこれぞザ・バットマンだ、と感じました。
◆ヴィラン
メインヴィランはリドラーですが、
実際はペンギンやファルコーネなど有名な悪役も登場、それに加えていつものように腐敗した行政組織。
ゴッサムシティ自体が悪に染まっていて絶望的な状況の中でバットマンが戦っているのが伺えます。
確かにバットマンがまだ活動を始めて2年なので仕方ないですが相変わらずこの街の治安悪すぎる。
リドラーはもともとコメディリリーフな面が強いのですが今回は終始シリアス。
ちょっと某「ゲームをしよう」の人っぽいギミックを使ったりしていて面白かったですね。
ただ正体を現すまでのひっぱり具合からすると、後半は少し物足りなかった感じがしました。
が、SNSで大衆を煽り、賛同者に行動を起こさせるってなんか今の時代嫌にリアルに感じます。
アーカムの中にいた“友達”は完全にあの人でしたね。続編に期待したいです。
関係ないですがペンギンがコリン・ファレルだって分かってても別人に見える演技が凄い。
◆ストーリー
「JOKER」もそうでしたが、今作もDCEUに属していない独立した作品になっています。
バットマンのバックグラウンドを知っていればそのまま観られる作品ですね。
過去一でダークと評されるストーリー。
バットマンの原動力となっていた“復讐”の動機が揺らぐような事実が明らかになったり、
そもそもリドラーも“復讐”を動機として動いていたり。
昨今のヒーロー映画でよく描かれる善悪の曖昧さ、多様化みたいなものがうまく描かれているような気がしました。
色使いがとても印象的で、暗く陰鬱で雨が降るゴッサムシティはほぼモノクロと言っていいくらい色がありません。
その中に出てくる街灯などの光や、夕陽などの色がとても映える。
3時間近い上映時間なので、見る前は結構身構えていましたがフタを開けてみたら結構あっという間でした。
一つ一つのシーンに丁寧に時間を使っているの印象ですが、間伸びしているような感覚はあまりなく、
むしろどんどん展開が進んでいくので引き込まれました。
闇に紛れて手の届く範囲で悪と闘っていたバットマンが、最後には自らを光の下に晒し人々を助けるシーン。
ただの復讐者としてのバットマンではなく、
正義の象徴としてのバットマンとなる覚悟が感じられたシーンでした。
◆まとめ
とにかく歴代最高なバットマンかなと。
今まではヴィランありきでのバットマン映画でしたが、
本作はバットマン自身にしっかりと焦点を当てた作品。
なぜバットマンとして闘うようになったのか、というところをバッサリカットしているおかげで葛藤と変化を深く掘り下げられているんでしょうね。
まだまだバットマンとして未熟な面がたくさんあるのですが、それらがスーツやガジェットにも反映されているのもとても興味深いところ。
登場人物のキャラクターも一人一人ちゃんと描かれています。キャットウーマンがハマり役。
とても丁寧に作られているのが感じられる映画ですね。
とはいえ、とにかく暗い。画面も話も。
ちゃんとした映画館で観ないとかなり観づらく感じそう。
話も万人向けではないので賛否両論あるでしょうね。
あとは謎解きミステリー的な宣伝は嘘。
上映時間は削れるんでしょうが、重厚感が薄まってしまいそうなのでこれでいいのだと思います。
飲み物は控えめにして備えましょう。
総じて私はとても楽しめました。
クレーンゲームでヌードルストッパーを頑張って取ってしまったくらい。
本編を観て、パンフレットを読んで、って至福の時間ですね。